様々な病気について(脳卒中)
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脳卒中とは

昔は「中気」あるいは「中風」と呼んでいましたが、突然に手足が動かなくなったり、言葉が話せなくなったり、意識がなくなったりする発作を「脳卒中」といいます。

脳の血管が詰まって血液が流れなくなったり(虚血性脳卒中:脳梗塞)、脳の血管が裂けて出血する(出血性脳卒中:脳出血・くも膜下出血)などして、脳の組織が障害されることが原因です。

日本では、「脳卒中」で突然死亡する人が非常に多く、1980年までは死亡原因の第1位でした。その後は少しずつ減少し、最近の統計では悪性新生物(ガン)、心疾患に次いで第3位です。医療の進歩により、脳卒中を発症しても死に至るケースは減りましたが、高齢化社会を反映して、脳卒中にかかる人の数はむしろ増えています。

脳卒中は誰にでも起こる病気ではなく、危険因子を抱えている人に起こります。脳卒中の危険因子には、高血圧や糖尿病、喫煙や大量の飲酒などがあります。

【脳卒中の分類】
  • 虚血性脳卒中:脳の血管が詰まり、血流が途絶えてしまう。
  • 出血性脳卒中:脳の血管が破れて出血する。

脳卒中の原因と症状

危険シグナル!

下記のような状態を示した場合は、生命が危険な可能性があります。
一刻も早く治療するのが原則です。

  1. 倒れて一時間以内に昏睡に陥る。
  2. 次第に意識状態が悪化し、2、3日後に昏睡に陥る。
  3. 興奮して暴れたあと昏睡に陥る。
  4. 激しい嘔吐、頭痛、めまいが起こり、次第に意識が薄れ、昏睡に陥る。
  5. 呼吸が不規則になったり、呼吸数が増える。
  6. 肺炎、胃、十二指腸潰瘍、心筋梗塞などが合併する。

問診が重要

脳卒中かどうかの診断の手がかりになるのは医師による問診が重要になってきますので、上記の症状などを参考に、医師に詳しく伝えてください。詳しい説明だけで、脳卒中の種類やその程度までおよそ見当をつけることができます。また、意識障害や言語障害のために患者が直接伝えられない場合は、発作時に近くにいた家族や周囲の人の情報が大切になります。発作時に誰もそばにいなかった場合も、発見してから受診するまでの経過を述べることが参考になります。

  1. 発作はどんな状況で起こったか。
  2. 顔や手足の麻痺、しびれるなどの感覚障害があったか。
  3. ろれつが回らないなどの言語障害はないか。
  4. 呼びかけても反応しないなど、意識障害の有無。
  5. 発作後、頭痛、吐き気、めまいなどの症状が伴っていないか。
  6. 高血圧症、糖尿病、心臓病、ガンなどの病気を患っているか。

医師が行なう検査

問診から脳卒中らしいと見当がついたときは、脳の病気を調べるためにCTスキャン、MRI、脳血管撮影のいずれかが行われます。このほか、全身状態を調べるために、血液検査、尿検査、胸部レントゲン、心電図検査などの一般的な検査も行われます。

脳卒中の治療法

脳卒中を起こしてから2週間以内を急性期と呼んでいます。この時期の治療は、全身状態を改善させるための全身管理と脳の状態を改善させるための薬物療法が中心になります。

また、発作を起こして2週間以上たつと症状が安定してきて、再度発作を起こさなければそれ以上に悪化しなくなります。この時期を慢性期といいます。この時期には症状に応じた薬剤の使用と、脳卒中を起こす原因となった病気の治療が主体となります。

現在までは、主に薬物などによる内科的治療が行われてきましたが、近年では患者さんの身体的負担が少ない手術法も開発されています。

脳卒中を起こしたときは、たとえ軽症でもできるだけ早く入院して治療するのが原則です。入院していれば病状が急変したときすぐに適切な治療が受けられ、発病初期にもっとも大切な安静も正しく守れます。

脳卒中を予防するには

くも膜下出血

  • クリッピング手術
    動脈瘤への血流を遮断するために、動脈瘤の根元を金属製のクリップで挟みます。それにより動脈瘤の中への血流が途絶え、動脈瘤は消失します。日本の患者の約9割がこの治療を受けています。
  • 動脈瘤塞栓術(コイル)
    開頭の必要がない治療法です。まず、脚の付け根の動脈からカテーテルという細い管を入れ、動脈瘤のある部位まで送り込みます。プラチナ製の細いコイルをカテーテルに通し、動脈瘤の中にコイルを詰め込みます。しっかりと塞ぎ、血液が入らないようにします。開頭しないため、身体的負担が少なくてすみます。

脳出血

脳出血と診断された場合、治療には「薬物療法」と「血腫除去術」があります。どちらの治療が行われるかは、出血量がひとつの目安になります。出血量が30mlより少ない場合は「薬物療法」、多い場合は「出血除去術」が一般的に行われます。

  • 薬物療法では、主に下記の3つが用いられます。
    • 止血薬:出血を止める薬で、血液を凝固しやすくする働きがあり、止血を促します。
    • 降圧剤:血圧の高い状態が続く場合に用いられ、血流の勢いを弱めることで血腫の増大や再発を防ぎます。
    • 抗脳浮腫薬:脳出血の発症後は、脳がむくんだ状態になっています。このむくみを取るために用いられます。
  • 血腫除去術は、手術で血腫を取り除くものです。
    頭蓋骨を部分的に切り開いて開頭する方法としない方法があります。
    • 開頭する場合:手術用顕微鏡で見ながら血腫を完全に取り除きます。治療中に止血の処置ができるため、発症直後の出血が止まっていない状態でも手術が可能です。
    • 開頭しない場合:CTで出血部位を確認し、それを基に切開部位を決めて、器具で固定します。そして頭蓋骨に小さな孔を開け、吸引管という細い管を入れて血腫を吸い取ります。局部麻酔のため、治療時間も短いことから、患者さんの身体的負担が少なく、体力が低下したお年寄りなど、開頭手術が受けられない人もこの方法で治療できます。ただし止血処置はできませんので、発症後出血が止まったことが確認されてからの治療となります。

脳梗塞

脳梗塞の治療は「急性期の治療」と「回復期・維持期の治療」とがあります。

  • 血急性期の治療

    急性期には詰った血管の血流を再開したり、改善したりすることが目的となります。そのため、薬で血栓を溶かす治療が行われます。
    投与法には、動脈注入と静脈注入の2通りがあります。

    • 動脈注入:脚の付け根の血管にカテーテルを入れ、それを脳血管の詰っている部位まで「血栓溶解薬」を送り込みます。
    • 静脈注入:腕の静脈から注射で「血栓溶解薬」のほか、「抗凝固薬(血液を固まりにくくする)」、「抗血小板薬(血小板が集まるのを防ぐ)」を注入します。
  • 回復期・維持期の治療
    急性期の後の比較的症状の安定した時期を指します。脳梗塞を引き起こす原因となった生活習慣病の改善を行います。また、「抗血小板薬」や「抗凝固薬」で血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぎます。
    脳梗塞の発症から3ヵ月ぐらいたって全身状態が安定してから、狭窄が起こって脳梗塞を起こしやすくなっている血管の内腔を広げたり、詰った血管にバイパスを作る手術が行われることがあります。

もやもや病

原因が不明なので、確実な治療法はまだありませんが、脳虚血発作の場合には「抗痙攣薬」「抗凝固薬」「脳循環改善薬(脳内の血液のめぐりをよくする)」などが使用されます。

また、頭蓋の外を流れている血液を脳内へ導き、脳内の血流を増やせば脳虚血発作や脳卒中発作を予防できるのではないかという考えから、いろいろな外科的治療も行われています。

脳動脈瘤

くも膜下出血の治療と同じ、クリッピング手術が用いられます。状態があまりにも悪い、状態が次第に悪くなる、ひどい脳血管れん縮が起こっているという場合には、手術をせずに状態が落ち着くまで経過を見ます。この場合は絶対安静を保ちながら、止血剤や脳圧降下剤などが用いられます。

脳動静脈奇形

出血を起こしたり、ケイレンを薬剤で防止できないときは、くも膜下出血の時に用いられる動脈瘤塞栓術を行います。

高血圧症

放置すると生命にかかわるので、緊急に入院する必要があります。まず高圧剤を使用して血圧を下げ、症状を落ち着かせます。その後、原因となっている病気の治療を行います。

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