高血圧症について
「高血圧症って、いつも血圧が高い人のことをいうんでしょ」なんて思っていませんか?確かに血圧が高い人のことをいうのですが、それだけではないのです。
症状が進行すると、重大な病気に発展しかねないので注意が必要です。それでは高血圧になる仕組みを解明してみましょう。
血圧とは?
全身の隅々まで流れている血液は、必要不可欠な栄養素を全身に行き渡らせ、不要な物質を運び去る働きをしています。この血液を送り出しているのが心臓です。心臓が動脈に血液を送り出す力によって、血液が動脈の内壁を押し広げる力も違ってきます。そして、この力を血圧といいます。
動脈の血圧は心臓が収縮したときにいちばん大きくなり、これを最大血圧と呼びます。また、心臓が拡張するときにいちばん小さくなりますが、これを最小血圧と呼びます。
高血圧と呼ばれるのは、どのくらいの数値?
日本人の4人に1人。50歳以上だと2人に1人が高血圧といわれています。さて、いったいどのくらいの血圧が高血圧といわれるのでしょう。下の図をご参照ください。
高血圧症とは?
1回の測定で標準だったからといって安心してはいけません。逆に、1回の測定で血圧が高かったからといって『高血圧症』とはいえません。血圧というのは、環境によって大きく変動します。数回測定し、そのだいたいの平均値が自分の血圧だと認識してください。数回の測定結果の平均値が最高血圧140mmHg以上、あるいは最低血圧90mmHg以上だった場合、高血圧と診断されます。
高血圧症にも種類がある?
高血圧症には2種類あります。『二次性高血圧症』と『本態性高血圧症』です。
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- 二次性高血圧症
- 血圧上昇の原因が病気によるものであるとはっきりしている場合、この高血圧症ということになります。原因となる病気は、慢性糸球体腎炎や慢性腎孟腎炎などの腎臓病や、原発性アルドステロン症やクッシング症候群などのホルモンの病気、また腎動脈狭窄、副腎腺腫、褐色細胞腫などのように外科手術が必要なものもあります。
二次性高血圧症では血圧を下げることよりも、その原因となる病気の治療が大切です。
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- 本態性高血圧症
- 血圧上昇の原因がはっきりとわからないものを指します。高血圧症の90%以上がこの本態性高血圧症に該当します。比較的症状がないので、検査をしても血圧が高いことしかわかりません。また家族に高血圧症の人がいると、高血圧症になる確立が高いというデータもあるように、遺伝的な問題もあります。
しかし、最近では研究が進み、生活習慣が原因ともいわれています。さらに症状が進行すると、さまざまな合併症を引き起こします。その代表格が動脈硬化になります。その結果、脳出血や脳梗塞などの脳卒中、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、または腎硬化症、大動脈瘤、眼底出血などの疾患を引き起こす可能性もあります。
高血圧症の原因と症状
高血圧症の90%以上が該当する『本態性高血圧症』。トップページでも紹介したように、この症状が起こるのは生活習慣に原因があることが徐々に判明しています。ここでは、その主な原因とされているものを紹介します。また、高血圧症は診断の決め手となる症状がないので、検査にはさまざまな種類を必要とします。そちらも併せて紹介していきましょう。
●主な原因
- 遺伝体質
- 本態性高血圧症を起こすもっとも大きな原因として、遺伝的な体質の有無があります。あらゆる病気がそうであるように、血縁に高血圧症の人がいると、それが大きく影響します。
- 加齢
- 自転車のチューブが時間とともに脆くなるのと同様に、血管もその弾力性を失います。そんな血液が通りにくくなった血管に、無理にでも血液を送り込もうと心臓の収縮率が高まり、血圧が上昇します。
- 食塩
- 食塩をとり過ぎると、血中のナトリウムが増えていきます。すると、血液中の塩分濃度を薄めるためにのどが渇いて水分をほしがります。腎臓が正常に働いていれば、余分なナトリウムも水分も尿となって排泄されますが、高血圧症体質を受け継いでいる人の場合、排泄の効率が悪いために血液量が増加し、動脈壁に圧力がかかり、血圧が上昇します。
- 寒さ
- 私たちの身体は、冷気に触れると、体温の発散を防ぐために体表面の血管が収縮します。血管が収縮して抵抗が強くなると、血圧は上昇します。つまり、夏よりも冬の方が血圧は上昇します。
- 肥満
- 肥満した体の隅々に血液を送り込まなければならないため、循環血液量は増え、心臓のポンプ作用が高まります。また、末梢の血管抵抗が大きくなるので、血圧が上昇します。肥満がストレスとなり、血圧に影響するホルモン量の変化により、血圧が上昇するという推論もあります。
- ストレス
- 私たちがストレスを受けると、脳下垂体から副腎刺激ホルモンが分泌され、その作用によって副腎からはアドレナリンが、神経末端からはノルアドレナリンが分泌されます。ノルアドレナリンは末梢の血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があります。
- 喫煙
- タバコに含まれているニコチンは交感神経を興奮させ、その結果、血管を収縮させたり、心臓の鼓動を速くして血圧を上げてしまいます。また喫煙量が増えると、善玉コレステロール値が低くなり、悪玉コレステロールが増えて血管壁に沈着し、血圧を高めるだけではなく、動脈硬化の進行を助長します。
●主な検査
高血圧症では、血圧の高さを調べるほか、合併症の有無を調べる検査も行います。高血圧症は、発見された時点で合併症が起こっている場合が多いのです。検査は日を変えて何回か行われ、面倒なこともありますが、原因究明だけでなく、その後の適切な治療計画を立てるうえで非常に重要ですから、指示された検査は必ず受けましょう。
- 問診
- 腎臓病など、高血圧になる病気にかかったことはないか。頭痛や肩こりなど自覚症状を感じたことはないか。塩分の多い食品を好んでいるか。ストレスが多いなど高血圧になりやすい生活を送ってないか。血の繋がった家族のなかに、高血圧や脳卒中、心臓病を患った人はいないか。などを質問します。
- 診察
- さまざまな姿勢で血圧を測り、その変化を見ます。また触診や聴打診が行われます。まぶたや脚のむくみは腎機能障害、不整脈や心肥大、心雑音、頸部静脈の膨れなどは心機能障害、手首の動脈が硬くなっていれば動脈硬化、腱反射などが鈍ければ神経障害などの障害の存在が認定できます。
- 尿検査
- 尿中に、健康であれば含まれることはほとんどない成分が含まれていないかどうかを調べます。タンパクと赤血球が多く含まれていれば、高血圧性腎症や腎炎などの疑いがあり、タンパクと白血球が含まれていれば、腎盂腎炎などで血圧が高くなっています。また、糖が含まれていれば、糖尿病の疑いが出てきます。
- 血液検査
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- 赤血球・血小板など
- 赤血球が極端に少ない場合は貧血で、慢性腎不全に陥っていることがあり、血小板数が極端に多い場合は、動脈硬化進行の指標となります。
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- 尿素窒素・クレアチニン・尿酸
- 尿素窒素とクレアチニン値が高いときは腎機能が低下している証拠です。また、尿酸値が高いときは、痛風になる恐れがあります。
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- レニン・アルドステロン・コーチゾル・甲状腺ホルモン・下垂体ホルモン
- 直接的に血圧を上げるレニンとアルドステロンの数値が高いときは、これが原因で高血圧症になっていて、また甲状腺ホルモン・下垂体ホルモン・コーチゾルの数値が高い場合、ホルモンの分泌が異常になる病気のために高血圧症になっている可能性があります。
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- コレステロール・中性脂肪・HDLコレステロール・血糖
- 正常値よりもコレステロールが多く、HDLコレステロールが少ない場合は動脈硬化が進行します。血糖値が高い場合は糖尿病が、中性脂肪が高いときは高脂血症が動脈硬化の進行に関与しています。
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また、そのほかに胸部X線検査や心電図検査、眼底検査、末梢循環血液量検査、血小板機能試験など、さまざまな検査によって高血圧症や合併症の状態を正確に調べます。
高血圧症では?と思ったら
本態性高血圧症の初期には、自覚症状を訴えないのが普通です。高血圧でも長期間その数値が安定していれば、自覚症状が現れないこともあります。健康診断や定期検診の際の血圧検査で判明する場合や、ほかの病気で病院に行ってわかる場合、ときには脳卒中や心筋梗塞などが発病したときに高血圧症が発見されることもあります。
しかし、まったく自覚症状がないとはいえません。一時的にではありますが、急激に血圧が上昇した場合や、臓器障害からくる症状もあります。よくいわれるのが、めまい・頭痛・視力低下・息切れ・むくみなどの症状ですが、そのほかの症状などがないか、以下に挙げた例を普段の生活に照らし合わせてみてください。
血圧の上昇による自覚症状
- 頭が重い、痛い
- めまいがする
- 肩がこる
- 動悸がする
- 吐き気がする
- 手や足がしびれる
- 顔がほてる
臓器障害による自覚症状
心臓障害からくる症状
- 動悸がする
- 息が切れる
- 脈が乱れる
- 階段を昇った後、胸に痛みの伴う圧迫感がある
- 呼吸がままならない
- 足がむくむ
- 夜に排尿でよく起きる
- 白い泡沫状のタンが出る
腎障害からくる症状
- 手や足がむくむ
- 朝、顔がすごくむくむ
- 貧血気味だ
- 吐き気がする
- 嘔吐してしまう
- 頭が痛い
目に現れる症状
- 最近視力が低下してきている
- 突然片目が霞んではっきり見えない
以上のような自覚症状がなくても、定期的に血圧測定を行って自分自身で血圧の状態を把握し、もしも異常が現れたら、医師の診断を受けて、その原因を調べることが大切です。
本態性高血圧症は、生活習慣や食事に気をつけ、自己管理を怠らなければ防げます。また重症であっても進行は抑えられ、一病息災で長生きすることも可能です。
高血圧症の予防法
高血圧症の治療と予防においてもっとも重要なのが食事ですが、このページでは食事療法以外の予防法や、日常生活で気をつけることを考えてみたいと思います。
- ストレス
- 精神的緊張やストレスは、著しく血圧を上昇させるといわれています。しかし、現代社会においてストレスを完全に回避することはほぼ不可能といっていいでしょう。ですから、休日にはリラックスし、好きなことをして、ストレスの影響を長く残さないようにすることが重要です。
- 寒さ
- 寒い外気にさらされると血管は収縮し、心臓は血液を強く押し出すので血圧は上昇します。ですから、冬には保温に努め、身体を寒い外気にできるだけさらさないようにしましょう。また、乾布摩擦などで寒さに対する抵抗力を養うことも効果的です。
- 暑さ
- 逆に暑い日に、水分もとらずに汗をかき続けると、血液の粘度が増して血管が詰まってしまうこともあるようです。また、暑い外から冷房の効いた室内に突然入った場合、血圧が大きく変化する場合がありますので、上着などで調節しましょう。
- 睡眠
- 熟睡しているときには、血圧が下がります。逆に眠りが浅かったりすると血圧は下がりませんので、就寝前のコーヒーやお茶は控えましょう。また心配事やイライラがあると眠れませんので、できるだけリラックスして床につくことが大切です。
- トイレ
- 排便時の"りきみ"は血圧を大きく上げます。とくに便秘の人はりきむ時間も長く、力も強いので、便秘にならないように食物繊維を十分にとることが大切です。また、洋式便器より和式便器のほうが血圧を上げるという実験例もあるので、血圧のことを考えた場合は洋式を選ぶようにしましょう。
- 性生活
- 性交中、とくに男性は射精後に血圧は上昇します。深酒をした後や、疲労時の性行為は非常に血圧を上げるので慎むようにしましょう。
- 運動
- 適度な運動は血管の緊張を和らげて血圧を下げ、コレステロールが筋肉で消費され、血中コレステロール値が低下するという効用をもたらします。また、ストレスの解消にも効果的です。ただ、思い立って急に運動することはかえって危険です。
- お酒
- 適量を楽しく飲む分には、ストレスを解消し、睡眠薬的な効用もあるので一概には悪いとはいい切れませんが、深酒は血圧を上昇させてしまいますので、習慣がある人は節酒を心がけましょう。
- タバコ
- タバコに含まれているニコチンは血管を収縮させ、一時的に血圧を高めたり、脈拍を速めたりします。
- コーヒー・紅茶
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コーヒーや紅茶に含まれるカフェインは、血管を収縮させたり、脈拍を速めたりして、血圧を上昇させる作用をもっています。また砂糖は中性脂肪を増やし、動脈硬化を進行させます。
以上のような自覚症状がなくても、定期的に血圧測定を行って自分自身で血圧の状態を把握し、もしも異常が現れたら、医師の診断を受けて、その原因を調べることが大切です。
本態性高血圧症は、生活習慣や食事に気をつけ、自己管理を怠らなければ防げます。また重症であっても進行は抑えられ、一病息災で長生きすることも可能です。